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このマンションを買って引っ越してくる前、僕らはすぐ近くの小さなアパートに住んでいた。
2DKの部屋が5部屋並んだ2階建てのアパート。
築年数もけっこうたっていて、見るからに古いアパートだった。

付き合っていた僕らが同棲を始めるために借りたアパート。
この辺の地区で、ペットの飼育が可能な割安アパートは貴重だったから、不動産屋でみつけてすぐに契約した。
砂利の敷き詰められたわりと広い庭に面した1階の部屋。
窓はいつも少し開けていて、そこから猫達が庭に出ては遊んだり、日向ぼっこしたりしていた。

当時5匹いた猫達にやられて壁はボロボロだったし、シンクが壊れたり、風呂のドアが外れたり、排水が詰まったりと古いアパートなりにトラブルも多かった。
左となりのカップルが朝方によく物凄いけんまくで喧嘩をしていて、何か事件になるのではないかと、いつもヒヤヒヤしていた。
右となりのおばさんが猫好きで、うちの猫達に餌を与えて可愛がってくれていた。
職をなくした友人がしばらく居候していたりもした。
近所の人達とも犬の散歩中に挨拶をかわして、何人かよく話す人もできた。
そのうちの一人が草野球チームの監督で、誘われるまま出来もしない草野球に参加したりもした。

良いこと、嫌なこと、住んでいた3年半の間に色々あったなあと思う。
その中でも、最高に大切な思い出が僕にはある。

それは本当にいつもの何でもない朝のこと。
いつもの時間に起きて、犬の散歩をし、いつものモーニングワイドショウを見ながら僕らは朝食を食べていた。
彼女はTVを見ながら何かの事件について話しているが、僕の耳にはその内容が入ってこない。
僕はその朝、そわそわしていた。
いや、正確に言うとここ数日、そわそわしていた。何も手に付かないほど。
その原因は数日前から、僕のバッグの奥の方にしまいこまれている。
僕は、その隠し事をいつ彼女に伝えるべきか悩み、数日間もそわそわしているのだ。
いつものモーニングショウの終わりが近づく。
この番組が終わったら、出勤の時間だ。
番組の最後はいつも占いのコーナーだった。
各星座ごとに5段階でその日を占う。
星座のマークの横に馬が1頭~5頭、走ってくるのだ。
言うまでもなく、1頭が最低で、5頭なら大ラッキーというわけだ。
物凄く稀に、一年に数回ってくらい稀に、5頭の上を行く超大ラッキーな日がある。
その稀な日は、5頭現れた馬が青いテディベアに変化する。ラッキーブルーベアと言うらしい。
ちなみに僕は双子座だが、双子座にラッキーブルーベアが出たのをまだ見た事がない。
見逃した日に出ている可能性もあるが、つまりそれくらい稀なのだ。
話は、そわそわした朝に戻る。
その朝、彼女の星座にラッキーブルーベアが出たのだ。
子供のように大喜びの彼女。
「今日、いったいどんな良いことがあるのかなあ!?」
僕はここ数日の隠し事を打ち明ける最高のタイミングを見つけた。
「どうして今日ラッキーブルーベアが出たか、俺、知ってるよ。」
僕は言う。
「え?なんで、なんで?」
彼女が聞いてくる。
僕は立ち上がり玄関の方へ歩いた。
玄関先に置いてある肩掛けのバッグに手を突っ込み、その一番奥から小さな箱を取り出す。
「君がカレーライスをあまり好きじゃないのは知っているけど、これからもたまにはカレーライス作ってね。」
たしか、そんなようなことを言いながら、僕は彼女にその小さな箱を渡した。
それから少しして、僕らは家族になった。



今日、朝から息子を連れてママ友のうちへ出かけて行った妻が、その道中で僕にメールをよこした。

コーポ里が無い
解体されてる
寂しいね
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【あのコーポ里が消えた?】
それなりに味のある建物で、バス停からも目の前にあったアパート・・初めて尋ねても間違えずに辿り付ける古びたアパート そう消えたのですか?時の移り変わりを感じますね!
ながーい人生を通り過ぎる内には、思い出の場所も一つ一つ消えてしまいます。母校だったり、炭住の友の家や、でっかい銭湯風呂、ゴジラを見に座布団を抱えて通った映画館などなど でもつい2年前に住んでいたアパートが無くなるのはショックですね。あの日のあの時のあの素敵な思い出は いつまでも心の中に持ち続けてくださいね。
【無題】
グッときちゃった。
素敵なエピソードじゃないか。

最後はしんみりしてしまった。
上手くは言えないけど
思い出の場所は、本当に思い出になってしまったんだな…
【同居人さんへ】
今は建物の半分くらい切り落とされたような状態で、余計に痛々しく見えます。
【スタッフAさんへ】
こういうやり取りのセンスはまったく無い方なんだけど、アルバイトスタッフにプロポーズのエピソードを聞かれて話したら、思いのほか女の子達に好評だった。
独りよがりにカッコつけていなくて、自然という評価をいただきました(笑)。
やるじゃん、俺。
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